障害基礎年金と働く|月20万円稼いでも年金が止まらないケース、止まるケース完全整理

「障害年金をもらいながら働いてもいいのか」は、当事者から最もよく聞かれる質問です。結論から言えば、働くことは原則自由です。ただし、20歳前傷病による障害基礎年金には所得制限があり、年収約370万円・約470万円で2段階の支給停止があります。また、再認定時に「働けるから等級が下がる」リスクもあるため、診断書の書き方・主治医とのコミュニケーションが極めて重要です。この記事で、稼ぎ方の戦略を完全整理します。

この記事で分かること

  • 20歳以降初診と20歳前傷病の違い
  • 20歳前傷病の所得制限の詳細(2段階の停止基準)
  • 所得計算の具体例(給与所得・事業所得別)
  • 再認定で等級が下がるリスクと対策
  • 診断書で就労状況をどう書いてもらうか
  • 働き方の工夫(障害者雇用枠・短時間勤務・在宅ワーク)
  • 運営者の経験(在宅ワーク月十数万円でも年金継続)

2つのパターンを区別する

障害基礎年金には大きく2つのパターンがあり、所得制限の扱いが違います。まずどちらに該当するかを確認することが、戦略を考える出発点です。

パターン1、20歳以降の初診による障害基礎年金

20歳以上で初めて医療機関を受診し、その傷病で障害認定された場合。所得制限は一切ありません。本人がいくら稼いでも、年金は満額支給されます。会社員として年収1,000万円稼いでも、自営業で年収2,000万円稼いでも、年金は止まりません。

これは、本人が20歳以降に「自分の年金保険料を払う立場」になってから障害になったケースで、保険料納付実績に基づく年金として、所得制限のない仕組みになっています。

パターン2、20歳前傷病による障害基礎年金

20歳前に初診があり、その傷病で20歳以降に障害認定された場合(または20歳到達時に認定)。本人が保険料を1円も払っていないケースが多く、社会保障の意味合いが強いため、所得制限が設けられています。

2026年度の基準は次の通り。本人の前年所得が370万4,000円超で2分の1停止、470万4,000円超で全額停止。これは扶養親族の数で若干変動しますが、目安として年収約510万円(扶養なし)で半額停止、年収約650万円で全額停止と覚えるとよいです。

自分がどちらか確認する方法

年金証書または年金事務所での確認で分かります。具体的には次の方法。

方法1、年金証書の確認。年金証書には受給開始の根拠条文が記載されています。「20歳前障害基礎年金」の場合は明示されています。

方法2、年金事務所への電話。「ねんきんダイヤル」(0570-05-1165)に電話して、自分の障害基礎年金が20歳前傷病かどうかを確認。

方法3、初診日の確認。20歳の誕生日より前に初めて医療機関を受診していれば「20歳前傷病」、20歳以降が初診なら「20歳以降」です。

所得計算の具体例(20歳前傷病の場合)

所得制限は「所得」で判定され、年収ではないため、職業や控除内容により実際の判定値が異なります。

給与所得者(会社員)の場合

給与収入から給与所得控除を差し引いた金額が「給与所得」です。たとえば年収500万円なら、給与所得控除約144万円を差し引いて所得約356万円。所得制限370万円以下なので、半額停止に該当せず、全額支給されます。

年収600万円なら、給与所得控除約164万円を差し引いて所得約436万円。これは半額停止基準(370万円)を超えているため、年金が半額に。全額停止基準(470万円)以下なので、まだ受給は続きます。

年収700万円なら、給与所得約520万円。これは全額停止基準を超えるため、年金が完全に止まります。

自営業・フリーランスの場合

事業収入から必要経費を差し引いた金額が「事業所得」です。経費が多ければ所得が下がるため、年収が高くても所得は低くなるケースがあります。

たとえば事業収入年800万円・経費年400万円なら、事業所得400万円。半額停止基準を超えるため半額停止。経費を増やせば(妥当な範囲で)所得を下げることができ、戦略的に重要です。

年金生活者の場合

公的年金収入から公的年金等控除を差し引いた金額が「雑所得」になります。65歳未満で年金収入年200万円なら、公的年金等控除110万円を差し引いて雑所得90万円。所得制限を大幅に下回ります。

等級維持の問題|診断書がカギ

所得制限とは別に、もう一つの大きな問題が「再認定での等級維持」です。障害年金は1〜5年ごとに「障害状態確認届」(更新時診断書)を提出して、等級が見直されます。このとき、「働けている=症状が軽くなった」と判断されると、等級が下がったり、不支給になったりするリスクがあります。

特に精神障害の場合、就労状況が等級判定に大きく影響します。「フルタイムで正社員として働いている」と診断書に書かれると、2級から3級に下がる、または非該当になる可能性があります。身体障害は明確な障害状態(視力・聴力・上下肢の機能・体幹機能等)が変わらない限り、就労していても等級は維持されやすいです。

主治医とのコミュニケーション

等級維持のために最も重要なのは、診断書を書いてもらう前の主治医とのコミュニケーションです。次の3点を意識してください。

ポイント1、就労状況の実態を伝える

「働いてはいるが、職場で多くの配慮を受けている」「症状の波があり、無理のない範囲での就労」「短時間勤務」「合理的配慮(席の配慮・休憩・在宅勤務など)が前提」など、就労の実態を主治医に詳しく伝えます。「働けている」だけだと、健常者と同じレベルで働けているように誤解されます。

ポイント2、症状の波・困難を文書化

診察前に「最近の困りごとメモ」を渡す。第1、症状が悪化する頻度(月何回パニック・幻覚・気分の落ち込みなど)。第2、職場で発生している困難(集中力低下・対人関係・突発的休み等)。第3、家事や日常生活への影響。第4、薬の効き具合・副作用。第5、家族・周囲からの支援内容。

ポイント3、社会保険労務士への相談

過去に等級が下がった経験がある、または更新が近づいて不安な場合、障害年金専門の社会保険労務士に相談することを強く推奨します。費用は5〜15万円程度かかりますが、それ以上の年金額(年20〜80万円)を守れる可能性が高いです。多くの社労士事務所が初回相談無料です。

働き方の工夫

工夫1、障害者雇用枠での就労

障害者雇用促進法に基づく障害者雇用枠で就職すれば、配慮を受けながら短時間勤務で働けます。診断書に「障害者雇用枠で配慮ありの就労」と明記してもらえば、等級維持の確度が上がります。

工夫2、就労継続支援A型・B型の活用

福祉的就労(別記事「就労継続支援A型・B型」)なら、一般就労と違い等級に影響しにくい傾向があります。月8万円程度なら、20歳前傷病でも所得制限に余裕があり、年金と併用しやすい。

工夫3、在宅ワーク・フリーランス

在宅でブログ運営・ライティング・データ入力・プログラミング等の仕事は、自分のペースで進められます。経費を計上することで所得を抑えやすいメリットもあります。

工夫4、扶養範囲内のパート

扶養範囲内(配偶者の扶養なら年収130万円以下)に収めれば、所得制限・等級判定の両面で安全圏。家計収入が必要なら最も無難な選択です。

運営者の経験

私は20歳前傷病による障害基礎年金1級を保有しながら、在宅ワーク(ブログ運営・ライティング)で月数万円〜十数万円の収入を得ています。年収にして150〜180万円程度。所得制限370万円以下なので、年金は満額支給されています。

更新の度に「働きすぎて等級が下がるのでは」と不安になりますが、主治医には「無理せず、症状を悪化させないペースで」とアドバイスを受け、診断書も実態(配慮あり・短時間・休みがち)を正確に書いてもらっています。これまで2回の更新で1級を維持できています。

等級維持のためには、医師との信頼関係と、就労状況の実態(無理して頑張っているわけではないこと)を正確に伝えることが何より重要だと感じています。

よくある質問FAQ

Q1:正社員でフルタイム就職したら年金は止まりますか

20歳以降初診の障害基礎年金なら、所得制限なしなので止まりません。20歳前傷病で年収約650万円超の場合は全額停止。それ以下の場合も、再認定時に等級が下がるリスクがあります。

Q2:アルバイトや短期就労は年金に影響しますか

所得が制限内なら金額面で影響しません。ただし、短期間でも「働けている」と診断書に書かれると等級判定に影響する可能性があるため、主治医に実態を伝えることが大切です。

Q3:配偶者の所得は影響しますか

20歳前傷病でも、配偶者・親の所得は障害基礎年金の所得制限には影響しません(児童扶養手当などの場合は配偶者所得が問題になるが、障害基礎年金は本人所得のみ判定)。

Q4:所得制限で半額・全額停止になっても、所得が下がれば復活しますか

はい、復活します。所得は前年所得で判定されるため、収入が下がれば翌年に支給再開。手続きは「再開届」が必要です。

Q5:結婚して扶養に入っても、障害基礎年金は止まりませんか

20歳以降初診なら止まりません。20歳前傷病でも、本人所得が制限内なら止まりません。扶養に入ることで自動的に年金が止まる仕組みはありません。

相談窓口

窓口は、お住まいの地域の年金事務所(日本年金機構)。電話は「ねんきんダイヤル」(0570-05-1165)。所得制限の判定・更新時の相談・就労影響などについて、無料で相談できます。

専門相談を希望する場合は、障害年金専門の社会保険労務士事務所への相談がおすすめ。「障害年金 社労士 (都道府県名)」でGoogle検索すれば見つかります。多くの事務所が初回相談無料です。

参考元(公式情報)

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