心身障害者扶養共済制度|親なき後の月2万円終身年金、加入で65歳以降は掛金免除

心身障害者扶養共済制度は、障害のある子を持つ親が掛金を納付し、親が亡くなった後または重度障害になった後に、障害のある子へ月2万円が終身支給される公的共済制度です。1口加入で月2万円、2口加入なら月4万円。65歳まで20年以上加入すれば、それ以降は掛金が免除されて終身給付だけが続きます。「親なき後問題」の最も強力な備えです。

この記事で分かること

  • 制度の仕組みと支給金額(月2万円×2口=月4万円が一生)
  • 加入要件と掛金(加入時年齢別の月額表)
  • 加入の流れ(健康診断含む)
  • 掛金免除の条件(20年加入+65歳到達)
  • 所得控除による節税効果(年18万円なら18,000円の節税)
  • 給付金は非課税(月2万円が手取りで丸ごと受給)
  • 加入できないケース・断られた時の対処

制度の全体像

正式名称は「心身障害者扶養共済制度」、運営は独立行政法人福祉医療機構(WAM)で、各都道府県・政令指定都市が窓口になって運営する公的共済です。1970年に創設、約50年の歴史があり、全国で約8万人が加入しています。

仕組みはシンプルです。障害のある子を養育する親(または兄弟姉妹・配偶者)が掛金を毎月納め、加入者(親)が亡くなった時または重度障害になった時、被共済者(障害のある子)へ月2万円が亡くなるまで支給されます。1口加入で月2万円、2口加入で月4万円。子が先に亡くなった場合は加入者(親)に弔慰金が支払われます。

加入できる人(加入者の要件)

加入できるのは、次のすべてを満たす人。第1、障害のある人の保護者(親・兄弟姉妹・配偶者・その他扶養者)。第2、加入時の年齢が65歳未満。第3、特別な疾病・障害がなく加入を認められる健康状態。第4、生命保険・損害保険会社の加入審査をクリアできる状態。

加入者は1人の被共済者(障害のある子)につき1〜2人まで(最大2口)加入できます。父と母がそれぞれ1口ずつ加入する、というケースもあります。

対象となる障害(被共済者の要件)

被共済者(障害のある子)は、次のいずれかに該当する人。第1、知的障害(療育手帳A・B、知的障害者の判定)。第2、身体障害者手帳1〜3級。第3、精神または身体に永続的な障害があり、その障害の程度が知的障害および身体障害1〜3級と同程度と認められる人(難病・精神障害など)。年齢制限はなく、何歳でも被共済者になれます。

掛金の月額(加入時年齢別)

掛金は、加入時の年齢で月額が決まり、加入後は変動しません。早く加入するほど月額が安く、長期的には総支払額も少なくなります。

加入時の年齢 1口あたり月額(2026年度)
35歳未満 9,300円
35歳以上40歳未満 11,400円
40歳以上45歳未満 14,300円
45歳以上50歳未満 17,300円
50歳以上55歳未満 18,800円
55歳以上60歳未満 20,700円
60歳以上65歳未満 23,300円

2口加入なら表の金額を2倍。たとえば40歳で2口加入なら月28,600円の掛金になります。

掛金免除の仕組み

次のいずれかの条件を満たすと、それ以降の掛金が免除されます。第1、加入後20年以上経過し、加入者が65歳に達した。第2、加入者の年齢が65歳に達した(短期間の加入でも年齢到達で免除)。

たとえば40歳で加入すれば、20年経過の60歳時点ではまだ免除されませんが、65歳到達時点で20年以上加入していれば即時免除になります。35歳で加入すると、55歳で20年経過、65歳到達時に免除条件を満たします。

免除後は掛金を払う必要はなく、終身給付の権利だけが残ります。長期加入のメリットは絶大です。

所得控除による節税効果

掛金は全額「小規模企業共済等掛金控除」として、所得税・住民税から控除されます。年間の掛金が18万円(月15,000円)の人の場合、所得税率10%なら年18,000円、所得税率20%なら年36,000円の節税効果。長期的には数十万円の節税になります。

年末調整または確定申告で「小規模企業共済等掛金控除」欄に記入することで控除を受けられます。年1回、独立行政法人福祉医療機構(WAM)から「掛金払込証明書」が郵送されるため、これを添付します。

給付金は非課税

受給する月2万円(または月4万円)は、所得税も住民税もかかりません。生命保険の年金とは違う扱いです。これは「障害者の生活基盤を支える」という制度趣旨に基づく特別措置で、極めて有利な税制優遇です。

たとえば月4万円(2口加入)を年間で受け取ると年48万円。これが非課税で手取り丸ごと使えます。同等の金額を生命保険年金で受け取ると、雑所得として課税されるため、実質手取りはもっと低くなります。

加入手続きの完全フロー

ステップ1:窓口に相談(所要時間30分)

お住まいの市区町村役場の障害福祉課に電話で「心身障害者扶養共済制度に加入したい」と伝えます。実施機関は都道府県・政令指定都市ですが、窓口は市区町村役場が担当します。担当者から制度説明と必要書類リストをもらいます。

ステップ2:加入要件の確認(所要時間1週間)

被共済者(障害のある子)の障害が制度要件に該当するかを確認。療育手帳・身体障害者手帳のコピー、医師の診断書(精神障害・難病の場合)などを提出します。

ステップ3:加入申込書の記入(所要時間1時間)

加入申込書、加入者(親)の健康告知書、年金管理者指定届、振替口座申込書などを記入。健康告知書は重要で、虚偽記載があると後日加入が無効になる可能性があるため、正確に記入します。

ステップ4:健康診断または医師の証明(所要時間1〜2週間)

加入者(親)の健康状態を確認します。年齢や告知内容によっては医師の診断書が追加で必要です。すでに重い病気や障害がある場合、加入を断られる可能性があります。

ステップ5:書類提出と審査(所要期間1〜2ヶ月)

すべての書類を窓口に提出。市区町村→都道府県→WAMの順に審査され、加入承認の連絡が届きます。

ステップ6:掛金引き落とし開始

承認月の翌月から、指定口座から毎月掛金が引き落とされます。同時に年金管理者(親が亡くなった時に子のために年金を管理する人、通常は他の家族や信託銀行)を指定します。

この制度の最大のメリット3つ

メリット1、終身給付の安心

親が亡くなった後、子が生きている限り月2万円(または月4万円)が支給され続けます。生命保険のような有期年金ではなく、終身年金です。子が90歳まで生きれば、その分まで支給されます。

メリット2、加入者(親)が長生きしても掛金が止まる

65歳到達+20年加入で掛金免除になるため、長生きするほど「払わずに権利を持ち続ける」状態になります。親が90歳まで生きても掛金は払い続ける必要がなく、子が亡くなるまで給付の権利は続きます。

メリット3、税制が極めて有利

掛金は全額所得控除、給付金は完全非課税。生命保険・個人年金より有利な税制が適用されます。長期的な節税効果と非課税給付の組み合わせは、他の金融商品では再現できません。

加入を検討する人へ

この制度は、障害のある子を持つ家庭にとって極めて重要ですが、認知度が低く未加入の家庭が多くあります。特に次のケースに該当する家庭は、すぐに加入を検討してください。

第1、子が知的・精神障害で生活基盤の不安が大きい。第2、親の年齢が60歳未満で、加入時掛金が比較的安い。第3、子に兄弟姉妹(きょうだい児)がいて、将来きょうだい児に負担をかけたくない。第4、生命保険だけでは将来の備えが不安。

逆に、加入を躊躇する理由として「親の健康に不安がある」「掛金の負担が重い」がありますが、健康に問題がある場合は早めの相談が、掛金負担はライフプラン全体での検討が必要です。

運営者の見解

私は当事者(障害のある子)の立場ですが、両親はこの制度に加入していました。父が60歳前後で加入し、現在は掛金免除の段階。父亡き後に月2万円が私に終身支給される予定です。「親が元気なうちに何を残せるか」を考えた両親が選んだ最良の選択だったと思います。

金額としては月2万円ですが、これは「生活費の足し」というより「絶対に止まらない収入の最低保障」としての価値が大きいです。障害年金・年金・働く収入が変動する中、終身で月2万円が確実に入る安心感は、お金以上の価値があります。

よくある質問FAQ

Q1:親が複数人(父・母)で加入することは可能ですか

はい、可能です。被共済者(子)1人につき、最大2人の加入者がそれぞれ1口加入できます。父と母がそれぞれ1口加入すれば、合計2口=月4万円の終身給付になります。

Q2:加入後に親が引っ越したらどうなりますか

新住所の市区町村に異動届を提出すれば、加入は継続されます。給付内容や掛金額に変更はありません。

Q3:途中で解約することはできますか

解約は可能ですが、原則として掛金は戻ってきません(生命保険のような解約返戻金はありません)。慎重な判断が必要です。

Q4:加入者(親)が重度障害になった場合は

加入者が重度障害になり、被共済者(子)の扶養が困難と認定された場合、加入者の死亡を待たずに給付が開始されます。具体的な認定基準はWAMにご確認ください。

Q5:給付の管理は誰がするのですか

加入時に指定する「年金管理者」が管理します。家族の他の人を指定するケースが多いですが、信託銀行を指定することも可能です。成年後見人が年金管理者を兼ねるケースも一般的です。

申請窓口の探し方

窓口は、お住まいの市区町村役場の障害福祉課(自治体により名称が異なる)。電話で「心身障害者扶養共済制度の加入相談」と伝えると、担当者が説明してくれます。実施は都道府県・政令指定都市レベルですが、住民への窓口対応は市区町村が行います。

制度の運営はWAM(独立行政法人福祉医療機構)が一元的に行っており、全国共通の制度です。引っ越しても加入は継続されます。

参考元(公式情報)

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