障害者総合支援法は、障害者が日常生活を送るために必要な福祉サービスを提供する根拠となる法律です。訪問介護・短期入所・就労継続支援・移動支援など、当事者が日常的に利用するほとんどのサービスがこの法律に基づきます。サービスを使うには市区町村で受給者証を取得し、障害支援区分の認定を受け、サービス等利用計画を作成する必要があります。この記事で全体像を完全把握できます。
この記事で分かること
- この法律の歴史(自立支援法→総合支援法への改称)
- 対象者(身体・知的・精神・難病)
- 利用できる全サービスのマップ(5カテゴリ)
- 受給者証取得から利用開始までのフロー
- 障害支援区分の認定の仕組み(1〜6段階)
- 利用者負担(応能負担、月額上限)
- サービス等利用計画作成と相談支援専門員の役割
この法律の歴史
2006年:障害者自立支援法
それまで身体・知的・精神でバラバラだった福祉制度を統合した「障害者自立支援法」が施行されました。これは画期的な統合でしたが、「自立支援」を強調するあまり、サービス利用に応益負担(使った分だけ自己負担)を導入したことが当事者から強い反発を受けました。
具体的には、福祉サービスを「使えば使うほど自己負担が増える」仕組みで、重度障害者ほど多くのサービスを必要とするため、結果的に重度者ほど負担が重くなる構造的な問題がありました。
2010年:応益負担の見直し
当事者・家族からの強い批判を受けて、政府は応能負担(所得に応じた自己負担)への転換を決定。これにより、低所得世帯の自己負担が0円になるなど、大幅な負担緩和が実現しました。
2013年:障害者総合支援法へ改称
名称が「障害者総合支援法」に変更され、内容も大きく改正されました。応能負担の確立、難病患者の対象化、サービス内容の拡大などが実現。現在の障害福祉サービスの基本枠組みになっています。
2024年:重要な改正
2024年4月に重要な改正が施行され、医療的ケア児の地域生活支援、就労選択支援(新サービス)の創設、共同生活援助(グループホーム)の退居者への支援、などが盛り込まれました。
対象者
対象は次の通り。第1、身体障害者(身体障害者福祉法に基づく身体障害者手帳保有者)。第2、知的障害者(知的障害者福祉法に基づく)。第3、精神障害者(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に基づく、発達障害者を含む)。第4、難病患者(障害者総合支援法施行令で定める366疾病、2025年時点)。
難病患者の対象化は2013年改正の大きな変化でした。それまで難病患者は手帳を取得できないと福祉サービスを使えませんでしたが、改正後は指定難病であれば手帳がなくてもサービス利用が可能になりました。
対象難病は厚生労働省告示で定められており、随時追加されています。具体的には、ALS・パーキンソン病・筋ジストロフィー・SLE(全身性エリテマトーデス)・潰瘍性大腸炎・クローン病・スティーブンス・ジョンソン症候群などが含まれます。
利用できる全サービスのマップ
この法律に基づくサービスは大きく5つのカテゴリに分かれます。
カテゴリ1、訪問系サービス
居宅介護(訪問介護)、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援。自宅でのケアを支える基本サービスです。
カテゴリ2、日中活動系サービス
生活介護、短期入所(ショートステイ)、療養介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援A型B型、就労定着支援、就労選択支援(2024年新設)。日中の活動を支えます。
カテゴリ3、居住系サービス
共同生活援助(グループホーム)、施設入所支援、自立生活援助。住む場所そのものを提供します。
カテゴリ4、相談支援
計画相談支援、地域相談支援(地域移行支援・地域定着支援)、障害児相談支援。サービス利用の伴走者として機能します。
カテゴリ5、自立支援医療・補装具・地域生活支援事業
自立支援医療(精神通院・更生医療・育成医療)、補装具費の支給、地域生活支援事業(移動支援・日常生活用具・成年後見制度利用支援等)。医療費・補装具・地域実情に応じたサービスをカバーします。
利用までの完全フロー
ステップ1:市区町村の障害福祉課に相談(所要時間30分)
「障害者総合支援法のサービスを利用したい」と伝えます。担当者から制度説明と利用までの流れを確認します。
ステップ2:支給申請(所要時間30分)
「障害福祉サービス受給者証交付申請書」を提出。本人確認書類、障害者手帳のコピー、(難病の場合)診断書を添付します。
ステップ3:障害支援区分の認定調査(所要時間1〜2ヶ月)
市区町村の調査員が自宅または窓口で、生活状況・支援必要度を80項目にわたって聞き取り調査します。同時に主治医意見書も求められます。これをもとに、コンピュータによる一次判定と審査会による二次判定を経て、障害支援区分(1〜6の6段階、6が最重度)が決定されます。
ステップ4:サービス等利用計画案の作成(所要時間2〜4週間)
相談支援専門員と一緒に、利用したいサービスと希望時間数を盛り込んだ計画案を作成。本人の希望・家族の希望・支援員の専門的見解を統合した計画書になります。
ステップ5:市区町村の支給決定(所要時間2〜4週間)
計画案をもとに、市区町村が支給決定。月の支給時間・利用可能なサービスが確定し、受給者証が交付されます。
ステップ6:事業所と契約(所要時間1〜2週間)
受給者証を持って、利用したい事業所と契約。事業所は本人選択で、複数事業所と契約することも可能です。
ステップ7:サービス利用開始
契約後、サービス開始。利用状況に応じて、相談支援専門員が定期的にモニタリング(月1回〜半年に1回)を行います。
障害支援区分の認定
障害支援区分は、サービス利用の「鍵」となる重要な認定です。1〜6の6段階で、数字が大きいほど支援必要度が高いと判定されます。
| 区分 | 支援必要度 | 利用可能サービスの例 |
|---|---|---|
| 区分1 | 軽度 | 居宅介護(家事援助)など |
| 区分2 | 軽中度 | 居宅介護(身体介護含む)など |
| 区分3 | 中度 | 行動援護、短期入所など |
| 区分4 | 中重度 | 重度訪問介護(肢体不自由)など |
| 区分5 | 重度 | 生活介護、施設入所支援など |
| 区分6 | 最重度 | 重度障害者等包括支援など |
区分認定が不要なサービス(就労継続支援・就労移行支援等)もあります。一方、訪問介護・短期入所・行動援護などは区分1以上が必要、重度訪問介護は区分4以上が必要、というように、サービスごとに最低区分が決まっています。
利用者負担(応能負担)
サービス利用料は原則1割負担ですが、月の負担上限が所得に応じて決まる仕組みです。
| 世帯区分 | 月の負担上限 |
|---|---|
| 生活保護世帯 | 0円 |
| 低所得(住民税非課税) | 0円 |
| 一般1(市町村民税課税世帯で前年所得約600万円以下) | 9,300円 |
| 一般2(上記以外) | 37,200円 |
20歳以上の障害者の場合、世帯は「本人と配偶者のみ」で判定されるため、親と同居していても親の所得は含まれません。これにより、本人収入がほぼない場合、自己負担0円でサービスを利用できる人が多いです。
サービス等利用計画と相談支援専門員
2015年から、すべての障害福祉サービス利用者にサービス等利用計画の作成が義務化されました。これは本人の希望・生活状況・必要な支援を整理した計画書で、市区町村に提出します。
計画は本人や家族が作成すること(セルフプラン)もできますが、専門知識が必要で見落としが起きやすいため、相談支援専門員に依頼するのが一般的。費用は本人負担0円(報酬は市区町村から事業所に直接支払われる)。
相談支援専門員は、計画作成後も月1回〜半年に1回のモニタリングを行い、計画通り進んでいるか・困りごとがないかを確認します。「サービス利用の伴走者」として、長期的に関わる存在です。
運営者の見解
私は身体障害者手帳2級と精神障害者保健福祉手帳1級を保有しており、障害者総合支援法に基づくサービスを複数利用してきました。在宅生活を続けるための訪問介護、就労継続支援B型、計画相談支援などです。
この法律の価値は「サービスのメニュー表が一元化されている」点にあると感じます。以前は身体・知的・精神でサービスがバラバラに提供されていたため、自分が使えるサービスが何かを把握するだけで一苦労でした。総合支援法に統合されてからは、市区町村の障害福祉課に相談すれば全サービスの説明を一元的に受けられます。
一方、課題もあります。地域ごとのサービス事業所数の差、相談支援専門員の不足、支給時間の自治体差など、運用面では改善余地が大きいです。当事者として声を上げ続けることが、制度の質を保つために重要だと感じています。
よくある質問FAQ
Q1:手帳を持っていなくてもサービスは使えますか
難病患者の指定難病(366疾病)に該当すれば、手帳がなくても使えます。それ以外の障害は、原則として手帳または医師の診断書が必要です。
Q2:サービスを使うのに費用はかかりますか
原則1割負担ですが、所得に応じて月の負担上限があります。低所得世帯は0円、一般世帯でも月最大9,300〜37,200円。多くの利用者は0円〜数千円で利用しています。
Q3:複数のサービスを同時に使えますか
はい、可能です。たとえば訪問介護・短期入所・移動支援・就労継続支援を同時に使うことが一般的です。
Q4:介護保険と併用できますか
65歳以上は原則として介護保険が優先されますが、障害者総合支援法のサービスを継続することは可能です。詳細は市区町村窓口で確認が必要です。
Q5:引っ越したらサービスはどうなりますか
新住所の市区町村に申請し直す必要があります。受給者証の引き継ぎはなく、新規申請扱いになります。
相談窓口
窓口は、お住まいの市区町村役場の障害福祉課。「(市区町村名) 障害福祉サービス」でGoogle検索すれば連絡先と窓口情報がヒットします。具体的なサービス選択や事業所探しは、地域の相談支援事業所(計画相談支援)にも相談すると詳しい情報がもらえます。